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トイレ掃除に集中し、サッサと終わらせて用具も片付けた。
男子トイレからはまだ、あのふたりのしゃべり声が聞こえてくる。
掃除は終わったんだか終わってないんだか…。
あ、そろそろ開店時間だ。
みんなが入り口の前に並び出した。俺も列の一番端につく。
しばらく姿が見えなかった柊斗もやってきた。
「幸村。代表になんか言われた?殴られた?」
俺の隣に立った柊斗が、列の一番端になった。
「いや、ちょっと注意されただけ。別に大丈夫だよ。」
「そっか。そりゃよかった!俺もね…。俺自身は、別に…何ともないんだけど。」
歯切れが悪いな。
…彼女のトラブルに巻き込まてるんだもんな。
俺から何か言うのは、気が引けるけど。
「もう開店だね。柊斗、今日も一緒に頑張るべー!」
無難な言葉で、話を切り上げた。もうお客さんも入ってきたし。
「おー。頑張るべー!」
『いぃらっしゃいやせえー!!』
フレイムホスト一同の声がハモった。
そのうち、柊斗はヘルプに入り、俺はキャッチに出された。
キャッチで店の外に出た時、毛皮のコートを羽織って紫レンズの眼鏡をかけた成金おばさまと腕組みして歩く零士さんと会った。
ふたりに軽くあいさつをして、新宿駅に向かって歩き出す。
さっきのおばさま、完璧に恋する思春期の少女の顔だったな。
ナックルみたいな指輪して、どうかしてるぜ。
新宿は、少しずつハロウィーンの飾り付けをする店が増えてきていた。
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