序幕

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小汚い、と言ってはなんだが、しかし綺麗とは言えない大きな部屋。 東に設けられた大きな窓からはさんさんと日差しが降り注ぎ、室内を明るく照らしている。 掃除はされているが、建物自体の老朽化の後は消せない。相当の築年数が経っていると思われる建物。 孤児院【テスタロッサ】 「ねえねえ、今日は何のお話してくれるの?」 部屋の中央に集まる子供の中から、そんな声が上がる。 「うーん……そうね。今日はこの世界を救った英雄のお話でもしようかしら」 子供たちの中心にいる、黒髪の優しい雰囲気を纏った女性が言う。 「ホント!? やったー!」 「えーゆうって何?」 「ばっか、お前そんなことも知らねーのかよ!」 子供たちが騒ぎ始める。女性はその光景に微笑んでいたが、両手をパンパンと打つと子供達を黙らせる。 「はいはい、皆静かにしてね。英雄っていうのはね、私たちを守ってくれた、うーん……正義の味方ってとこかしら」 「正義の味方!」 そう言うと子供たちの目がキラキラと輝き出す。 「うん、そうよ。そうね……じゃあ、まずその正義の味方が私たちの前に登場したところから話そうかしら――」  
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