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広がる緑。広がる青。群がる人。集まる視線。
(これなんてゼロ使)
目の前で佇むのは桃色の髪を持った金の瞳の小柄な美少女だった。
(ルイズみてーだな。少し違うけど)
「だ、誰よアンタ!? どうして平民がここにいるのよ!?」
(うん、俺が聞きたい)
目の前のルイズ似の美少女は驚いたように声を上げた。
驚きたいのはこっちだと、日向亜希は心の中で思う。
「お前こそ誰だよちび桃。そしてなんで俺はここにいるんだよ」
やれやれ、といった風を装って尋ねる。実際はやれやれどころではない。
「な、な、な、なん、なんですってぇぇぇ! この私に向かってその口の聞き方はなによ!」
(この私とか言われても……どの私だよ)
「先生! 召喚のやり直しを要求します!」
その少女の剣幕と言葉にどこまでゼロ使なんだと溜息を吐く。
日向亜希は、どうしてこうなったのだろうかということに思考を馳せる。
朝起きて、まず最初に目覚まし時計を壊した。うん、何時もと同じだ。
次に、朝飯を食べた。トーストに苺ジャムを塗っただけのシンプルなものだ。
その次に、学校の用意をして家を出た。道行く人々に軽く殺人衝動が湧いた。うん、何時も通りだ。
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