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目の前の少女は自分よりも大きい胸を見て、それから自分の胸を見て落胆する。
「そいつは私が召喚したのよ!」
桃色の少女が言った。
顔は赤くなっていて、肩で息をしていて、杖を握る右手がプルプルと震えていた。
要するに、桃色の少女は怒っていたのだ。
「……貴女、誰?」
「私は、クライム王国第一王女のアミリア・グレイス・クライムよ! それより、アンタこそ誰よ!? その格好どう見てもこの学院の生徒じゃないじゃない!」
桃色の少女――アミリアは、生まれて今まで生きてきた中で、今日ほど怒ったことはなかった。
王女として生まれた自分は、何不自由なく生きてきた。あれが欲しいと言えば手に入れられたし、あいつ嫌いと言えばそいつはすぐにどこかに飛ばされた。
そんな、今まで思いのままに生きてきたアミリアにとって、今日は最大にして最高に屈辱的な日だった。
まず、神聖な召喚の儀式で、黒髪黒目で黒い服(学ラン)を着た平民が召喚された。これだけでも機嫌が悪くなるのに、あろうことかその平民は王女である自分に対してまったく敬意を表さないのである。
学院でのクラスの担任に召喚のやり直しを要求するも断られ、どうしたものかと思っていたら、平民は自分の話を聞かなくなった。
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