516人が本棚に入れています
本棚に追加
「まあそういうことだ。準備しとけよ? ああ、あといつか俺の部屋来いよ、金やるから」
「了解であります!」
ビシッと敬礼をするセシル。
そんなセシルを尻目に、俺は部屋に戻った。
ガタゴト揺られて早数時間。俺は今オビニオン砦に向かう馬車に乗っている。
今なら車の偉大さがよくわかる。馬車はダメだ、揺れるし固いし遅いしで、乗ってるだけで疲れる。
ああ、車のシートが懐かしい。初の国産自動車の昴でいいからこの世界に欲しいわ。
目の前の座席に座る桃色の髪の王女と紅色の髪の勇者を見遣る。そいつらはまったく動じた様子もなく、疲れた様子もなく馬車に揺られていた。
なんでこいつらは平気なんだよ。おかしいんじゃねーか? もう人間じゃねーよ。
ちなみにセシルはとっくに俺の隣で死んでいた。「うぁー……ニルヴァーシュ、ニルヴァーシュが欲しい……」とかなんとか呟いている。俺も欲しいわ。
「アンタらだいぶお疲れのようね。そんなに馬車での移動は疲れる? 意外と言えば意外なんだけど……」
「セシルはともかくとして、亜希まで疲れるとは私としても意外です。亜希はあまり馬車に乗ったことがないんですか?」
最初のコメントを投稿しよう!