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間違いない。
この死体は兄の俊だ。
背は高い侭だったけれど。
がりがりに痩せ細った手足や顔は
とても、とても小さくなっていた。
「お兄さん、だね?」
聞こえてきた刑事の言葉に、私は無言で頷いた。
兄の名前を呼ぼうとした。
唇が震えて、上手く言葉にならない。
私の口から洩れたのは、意味をなさない呻きだけだった。
息が上がる。
胸が苦しい。
細い笛のような音が漏れているのを止めたくて、口元を、両手で覆った。
涙が止めどなく溢れた。
嗚咽を噛み殺して、私は一人で其処に立ちつくしていた。
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