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「この最初のガイシャ、須々木っていうんだが」
澤井は2枚の写真を机の上に並べた。
1枚は証明書の写真でまっすぐ前を向いている。ノンフレームのメガネをかけた真面目そうな20代後半くらいの男性だ。
そして、もう1枚。地面に横たわる干乾びた死体。
事件現場で撮ったものだ。
干からびているだけでなく、身体の半分近くが燃えて焼け爛れていた。
見る影も無く変わり果てているが、どちらも須々木の写真だった。一連の殺人の、最初の被害者だ。
「死体発見は八月三日なんだが、身元を証明する遺留品がなくて
九月の終わりまで死体の身元が割れなかったんだ」
配島は頷いた。
その事なら、一昨日の会議で聞いて知っている。
「そして、これが新しく見つかった写真」
女性がマイクを持って歌っている写真の隅に、グラスを片手に座っている男を指差した。
「この右端に写ってるのが、ガイシャだ」
長めの前髪で顔の右半分は隠れているが、洒落たデザインのノンフレームの眼鏡をかけた物憂げな青年が写っている。
部屋の照明が薄暗いので、余りはっきりと映っているとは言い難かったが、かなり整った顔立ちをしている事が見てとれた。
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