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「最初に見つかったガイシャの鑑識結果、聞いたか?
外傷が一ミリも無いんだと」
配島の顔を覗き込むように顔を近づけた。
色素が薄い瞳に街灯が反射する。
獲物を狩る肉食獣のような目。
こんな男に追われたらさぞ生きた心地がしないだろうな、と思いながら、配島は視線を逸らした。
「知ってますよ。
でも、オカシイじゃないですか」
叩かれた後頭部を擦りながら、食い下がる。
「血液が一滴も残ってないなんて、オカシイっすよ」
「それを調べるのが、俺達の仕事なんだよ」
澤井は片手で、配島にデコピンした。
たかがデコピンだが、澤井の指は太く頑丈だ。
その思いがけない破壊力に、デコを押さえて配島は小さく呻いた。
「兎に角、ごちゃごちゃ言ってる暇があったら足を使えって事だ」
やる事は滅茶苦茶だが、澤井の言う事は正論だった。
澤井の言っていた最初のガイシャの遺体は、火葬場で焼かれる前に忽然と消えていた。他にも二人の遺体が消えている。
いくら頭を捻って憶測したところで、全く埒が明かないのだから、自分の足で調べるしかなかった。
「はいっ、頑張ります」
配島は敬礼して澤井に応えた。
「よし」
澤井は、にやりと笑った。
地道に足を使って聞き込みをするのが、回り道のように見えて実は一番近道であったりする。
配島は澤井に比べて未だ未だ経験が浅いが、其れだけは身をもって知っている。
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