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大陸を越えて来た私は、この国の内情に疎い。それでも私は、今、目の前のこの貴族が好かれていないことは判る。
貴族の男は何処で私の存在を知ったのか沢山の送り物を携えて私に会いにきた。
湯浴みを終え用意が終わったと謂わんばかりの訪問に私は勿論苛立ったが。
何だかずっと見られていた感があり気持ちが悪いのだ。
私が彼に会う理由もないし丁重にお断りした。
しかし彼は権力を振りかざし有無を言わせず部屋へと押し入って来て、今、我が物顔でお茶を飲んでいる。
「流石は大王様が気に入られた女性だ。大変お美しい。しかし私の娘も貴女に負けぬ美人でね、中々大王様に気に入って貰えずにいるのだが、貴女は一体どうやって大王様に取り入ったのか。」
はい。
この人、敵です。
プレゼントは口実で私を牽制に来たのね。
私を見下した物言い。
私を見る蔑んだ視線。
何処の馬の骨かと口には出さないけれど態度に出ているわよ?
すっごく腹は立つが相手にしない。私自身、今の立場が分からないし。
まぁ両隣で威嚇しているハルクとハルアは見てみぬ振りだ。
あとはジグが何とかするでしょ?
侍女長が直ぐに動いてくれてたし。
「無礼ですよ、ワイヤレス伯爵。」
ふと入口で声がした。
見れば白髪の品の良い老人が立っていた。
目の前の貴族より身分が高いのだろう、貴族は明らかに動揺している。
あ、ちなみに入口のドアは開けてましたよ?密室にして後で面倒な事になっては困るので。
老人は私に了解をとると部屋の中に入った。
「メイ様、我が国の一貴族が大変失礼をしました。」
頭を垂れる老人。
それを見て青ざめる貴族。
「公爵!?」
「何を勘違いしたのか知りませんが、高貴なお方の部屋に押し入るなど、首が飛んでも文句は言えませんよ?」
「え?な、な、なっっ。」
口をパクパク魚みたい。
そして私は高貴な人という設定?話、合わせた方が良いかしら?
「公爵。私は不愉快です。私に対しての数々の無礼、許せません。」
「申し訳ございません。」
「それと私の存在を軽々しく口外した者への処罰を。」
目の前の貴族に私の事を報告したのは最初にあった侍女だろう。彼女達以外に人に会ってないんですもん。もちろん侍女長とハルクにハルアじゃないわよ?
口も聞かなかった二人だと思う。そして貴族に報告する時、私の着ていた服装も告げたのだろう。それを聞いて貴族は私の身分を平民と判断。権力を振りかざし今に至るっと。
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