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子供が生まれた。
とっても可愛い。
名前はサヤ。
魔女である私の娘。
私の1番の宝物。
私達は森の奥深くにひっそりと住んでいる。
邪魔物はいない。
ここは私の楽園なのだ。
「っっ!」
「やぁ、麗しき僕のメイファ」
私の目の前に男が佇んでいる。茶色の髪に青い瞳。一見軟弱そうに見えるこの男、剣の腕前は一流の腹黒野郎だ。
「何の用よ!」
全く人の気配がしなかったから油断した。今日は天気がいいから外でサヤと遊んでいたのにっっ。邪魔されたうえに可愛いサヤの姿を腹黒野郎に見られるとは!あ~サヤ、奴を見て喜んじゃ嫌だよ~。
「いい子だ。ちゃんと僕を覚えているね。」
「覚えてないし!あんたの顔が面白いから笑ったのよ!!」
「流石は可愛い僕の娘」
「違うっっ私の娘よ!」
「そう、僕達の娘。」
「ちーがーうーっっ」
あ~腹立つ。何よ!ニヤニヤして。分かってるわよ、私の反応みて面白がってんでしょ!!あぁ~サヤ抱っこって手をださないでぇ~~
「で、何用よ?この森は魔女の領域。むやみに立ち入っては呪いをうけるわよ。」
サヤを守るために森全体に掛けた私の魔法。攻撃魔法は得意ではないけれど護りならば一流なのよ。
「僕が君達に危害を加えるわけないだろ?こんなに愛してるのに。」
「キモい。」
「・・・傷付くなぁ。」
「だいたい用もないのに、あなたがここに来ることがあって?クリス宰相。」
若きアメージング王国の腹黒宰相。まぁ腹黒じゃなかったら29歳でのし上がれはしないだろうけど。
「で?」
「貴方に会いに。」
クリスはニッコリと微笑んだ。とっても笑顔が胡散臭いのは何故だろう。
「だ・か・らっっ」
クリスは細長い目を更に細めて私を見つめる。なぜか背筋がゾクゾクしてきた。
「メイファ」
魔女たる私の名前を軽々しく呼ばないで頂戴。何?何よ?側に来ないでよ。ギャー髪に触れないでキスなんかしないでっっ
「キャハハ。」
硬直している私の腕の中でサヤが笑ってる。クリスに向かって手を伸ばし嬉しそうにしている。クリスはそっとサヤの手を握った。
「小さいね。」
「当たり前よ。赤ちゃんだもの。」
知ってるよっとクリスは笑って愛しそうにサヤを見つめる。
・・・本当に何しに来たのかしら?
「抱かせてくれないのかい?」
私は顔をしかめる。
「ダーダーダー。」
でも、サヤは抱っこして欲しそうだ。私は渋々クリスにサヤを預けた。
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