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その時。
風が。
魔力の流れが。
「!?」
魔法の発動。
でも、ここは魔女の森。
誰にも私達を傷付けることなどできない。
だけど!?
「クリス!!」
発動したのは転移の魔法。攻撃魔法じゃないから魔法は完成してしまう。サヤを抱いたまま何てことをしてくれるんだ。
「メイファ、城で待ってるよ。」
クリスはそう言い残し私の前から姿を消した。
油断した。
「やっぱり何か企んでたんじゃないっ!!」
私のサヤを愛しき娘を。
私はキッっと後ろを振り返った。クリスには魔法が使えない。だったら使える者がいる。転移の魔法は上級魔法。魔女以外に使える者がいるならば--
「王庭一級魔術師ルカイヤ。」
国王お抱えの若き一流魔術師。振り向いた先には見覚えのある青い髪の男が地べたにはいつくばっていた。
「・・・何の真似よ。」
「・・・・・。」
「ちょっと私の森で勝手に死なないでくれる?」
ルカイヤは弱々しく右手を上げて見せた。何度も言うようだが転移の魔法は上級魔法。早々使える物でもない。それも二人も転移させたものだから大方魔力が尽きてへばっているんだろう。私にはとても都合が良い。
「さぁルカイヤ、説明を。」
クリスがサヤを傷付けることはないとは思うけど魔女の娘を連れ去った罪は決して軽くはない。
魔女とは秩序を守る者。
魔女とは秩序を正す者。
魔女とは世界を導く者。
ルカイヤは静かに佇む私を見て観念したように地に伏せた。
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