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ルカイヤは弱々しく声を出す。あ、顔が泥だらけで汚れてる。私に踏まれた状態で口を開けるから口の中に泥が入った。
「-----」
ジャリジャリ音がして何を言ってるのか分からない。
「----姫」
あ~涙目。ちょっと可哀相かな?
私は踏んでいた足を退かしてあげた。
ルカイヤはぺっと泥を吐き出すとゆっくりと起き上がった。
「魔女殿には申し訳ないのですが、王のご命令でして。」
「はぁ?アランが娘の誘拐犯!?」
今や英雄である弟王。
目付きの鋭い黄金の獅子。大柄で人を屈服させる威厳をもちながら人を魅了する魅惑的な男。
「何故?魔女に喧嘩吹っ掛けるつもり!?」
「違います、違います!王は魔女殿と姫に会いたいだけなんです!」
「ハァ?」
「王は政務が忙しくこの森に来れないため、仕方なく私目に命令を。」
「・・・」
「魔女殿が城を出て半年、王は気が狂うと嘆いて二人に会いたいと。」
「だからって連れ去った言い訳にはならないわよ!」
「王は姫に会う権利を主張しています。娘である姫に親である王は共に過ごす権利があると。」
「!アランは父親じゃないわよ!!」
「しかし王は確信しています。」
「違うって!」
「違うという確証もありません。」
ルカイヤは静かにそう言うと微笑んだ。
「魔女殿に城に戻ってもらう為に少々強引に魔法を使いました。」
「少々どころか、これはもう強制よ。」
「王の手紙を無視した結果です。」
自業自得と言う呟きが微かに聞こえた。
「冗談じゃないわよ~」
ただ静かにサヤと暮らしたいのよ私は!!
城に居たら平穏を保てない。城では感情が先だって魔女としての判断が狂う。長く共に戦ってきた者達に心を捕われ揺り動かされるのだ。魔女とて所詮人。感情を征するのは難しい。だから大半の魔女は人に係わらずひっそりと隠れて暮らす。人の寿命を全うした後の選択まで。
「ともかくサヤを連れ戻すわ。ルカイヤ私を転移させて頂戴。」
「え?」
ルカイヤは首を振った。
「無理です。」
「無理でもやるのよ」
「私はまだ死にたくありません。」
「もぅ~役立たず!」
仕方ない。
自分で。
転移の魔法は、苦手なんだけどなぁ。いっつも検討違いの所に出るのよね。何でだろう??
私は額に指を充てて魔法に集中。目指すは王の間。門からじゃなくて直接行ってやるわ!
「ちょっ魔女殿!!」
ルカイヤの慌てる声を聞きながら私は転位した。
一刻も早くサヤの元へ。
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