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転移の魔法。
思い描いたのは王のいる間。半年前まで住んでいた城の間取りは今でも忘れていない。
赤を象徴としたエンブレムを高々と掲げ、王が上段より下を見下ろす。憮然とした表情は笑みを浮かべることもなく淡々と執務をこなしてゆく。
懐かしい情景。
半年前まで私も居た場所。
「懐かしいって思うほど時が過ぎたのね。」
体の浮遊感が終わる。
到着した。
私は閉じていた目をそっと開けた。
「!!」
突然、ガクンっと体が傾いた。
傾く?
私の体はそのまま落下していく。
落下??
「うきゃ。」
なに?何?ナニ??
頭がついていかない。
ポスンっと私の体は何かに包まれた。
包まれた?
「お前は何物だ?」
頭の上から声が聞こえる。見上げると綺麗な顔をした人が居た。
水の色の髪に水の色の瞳。まるで水の精霊のような姿は幻想的な程美しかった。私は夢心地で見とれてしまう。
「綺麗。」
「質問に答えろ女。」
綺麗な人は不機嫌な声を出した。
「ん?」
よく通る低い声。
綺麗な顔には不釣り合いなほど刺々しいしい。
「それに重い。」
今、イラっとする一言が聞こえてきたような?
「早々に世の上から下りろ。」
うわ~スッゴい偉そう。
私は今の状況を把握しようと周りを見回した。
「・・・あら?」
あら?アラ?アララ?
この状況は??
周りを見回した私の視線は私を包んでいる人の腕に気付いた。そのまま腕を辿って視線を上げれば--
「綺麗。」
うっとりしてしまう綺麗な顔。何故だか私は美人さんの膝の上に腰掛け、腕に包まれていた。
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