第壱訓:夢出逢い

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シャーッ 「おっ。りぃんっ、おっはよー」 「夏奈、後でねっ」 徒歩で登校していた少女の横を猛スピードで通り過ぎ、美月は正門へと入っていく。 自転車小屋に自転車を停め、鞄とバックを持ち、短距離走選手を思わせるダッシュで剣道場へと向かっていった。 少女『鈴』が、入口から剣道場を覗くと、中に居た一人の少年が気付いた。 「あっ、黄楼先輩。おはようございます」 「あ、多軌くん。龍樹と先生は?」 「部長なら今、出てます。先生は職員会議ですよ」 「良かった~」 と、ここで無用心に入ったのが間違いだった。いきなり肩を叩かれ、鈴は心底驚いた。 後ろを向くと、居ない筈の二人が、入口から覗いただけでは見付からないよう、戸にピッタリとくっついていたのだ。 「何が『良かった~』だよ、この遅刻魔」 「りゅ、龍樹。谷崎」 「ほほぅ。顧問を呼び捨てとは、良い度胸だなぁ。ん?」 (た、多軌くん~。) 鈴が涙目で多軌に顔を向けると、多軌は両手を合わせ苦笑いしている。 「すみません、先輩。断れませんでした」 多軌の向こうの数人もまた、笑いを溢している。もともと練られていた策だったのだろう、皆が愉しそうに見ている。  
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