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シャーッ
「おっ。りぃんっ、おっはよー」
「夏奈、後でねっ」
徒歩で登校していた少女の横を猛スピードで通り過ぎ、美月は正門へと入っていく。
自転車小屋に自転車を停め、鞄とバックを持ち、短距離走選手を思わせるダッシュで剣道場へと向かっていった。
少女『鈴』が、入口から剣道場を覗くと、中に居た一人の少年が気付いた。
「あっ、黄楼先輩。おはようございます」
「あ、多軌くん。龍樹と先生は?」
「部長なら今、出てます。先生は職員会議ですよ」
「良かった~」
と、ここで無用心に入ったのが間違いだった。いきなり肩を叩かれ、鈴は心底驚いた。
後ろを向くと、居ない筈の二人が、入口から覗いただけでは見付からないよう、戸にピッタリとくっついていたのだ。
「何が『良かった~』だよ、この遅刻魔」
「りゅ、龍樹。谷崎」
「ほほぅ。顧問を呼び捨てとは、良い度胸だなぁ。ん?」
(た、多軌くん~。)
鈴が涙目で多軌に顔を向けると、多軌は両手を合わせ苦笑いしている。
「すみません、先輩。断れませんでした」
多軌の向こうの数人もまた、笑いを溢している。もともと練られていた策だったのだろう、皆が愉しそうに見ている。
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