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数分後、龍樹と谷崎顧問にたっぷりと絞られている鈴が、やや小さくなっていた。
「もー。だったら龍樹が朝、起こしてくれれば良いじゃん! 家が隣なんだからそのくらいしてよ!」
「馬鹿言え。俺が起こしにいってマトモに目ぇ覚ましたことが一度でもあったかよ」
事実を指摘されると、口下手な人間は、そこで会話を止めてしまう。
言い返したくても出来ないので、人は話題を変える等々するのだが、鈴にはそもそも変える話題すらない。なので、返事の代わりに小さく唸るのみでいる。
「何さ、フリョーめ」
「なにか言ったか?」
「何でもござぁせん」
龍樹が眉間に皺寄せたが、鈴の返答に溜め息をつき、そのまま歩を進める。
鈴はその背に舌を出したが、次に軽く微笑み、龍樹の後を歩く。
「んじゃ、また後でな」
「うん。またね」
二階の東階段で、二人は別れ、それぞれの教室に向かう。
鈴は二年生なので、この階で良いのだが、三年生である龍樹はもう一階上に行く必要がある。
鈴が教室に入ろうとすると、後ろから女子生徒が、シュルンと擦る様に抱きついてきた。
「おーおー。朝っぱらから暑いわねぇ。熱中症で倒れっちゃうわぁ。」
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