セカイのはじまり

10/11
前へ
/11ページ
次へ
 まるで何かの呪縛から解放されたかのような、不思議な感覚を感じながら。  いつの間にか彼女は、声を漏らして泣いていた。溢れてくる涙を両手で拭いながら、溜め込んでいた全てのものが声となって外へと流れていく。 どうしようもなくもどかしく、けれど優しく温かい何かを、はっきりと感じながら。  しばらくすると、まるで見たことのない世界へと彼女を導くかのように、曇天の空は徐々に退いていった。その微かに開いた雲の隙間から鮮やかな光を纏いながら、朝陽が昇りはじめる。 その風景を見れば、泣き出してからずっと静かに彼女の頭を撫でていた彼がふと言葉を出す。 「ほら、顔上げてみ。今日の日の出はめっちゃ綺麗やで」 ぐすぐすと鼻を鳴らしながらも言われるがままに顔を上げてみた。直後、彼女は自分の目を疑った。  「わ……」  
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加