セカイのはじまり

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 そこには、見たことのない景色が広がっていた。 辺りは白く優しい光に照らされ、灰色だった雲は、塗り替えられたかのようにその色を変えていく。 まさに"幻想的"だった。  …こんな綺麗なものがあったなんて。  宝石を見ている無垢な少女のように、景色に目を奪われていたが、ふと彼の姿が視界の隅に入れば、無意識にそちらへと顔を向けた。すると、気づいた彼も彼女の方へ顔を向ける。  直後、彼女は生まれて初めて、胸が一瞬高鳴った。  彼が、屈託のない満面の笑顔をしていたのだ。嘘偽りのない、純粋無垢な笑顔を。  これが、彼女の『セカイのはじまり』だった。  
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