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* * * * *
…一体、どれくらいの時間が経ったのだろうか。
気がつけば辺りは暗くなっており、街には明かりが灯されていた。
しかし雨は一向に止む気配は無く、ただひたすら降り続けていた。
その中で彼女は、人通りのない薄暗い路地裏に一人座り込み、傘も差さず、自分の醜くなってしまった顔を隠すようにフードを深く被り、小さくうずくまっていた。
光を見失った瞳で落ちる滴を見ながら、彼女はただ茫然と、この雨に打たれながら、時間だけが過ぎるのを待っていた。
出来ることならば、この時間が永遠に続けばいいと思いながら…────
そうしたことを考えていた彼女の視界の隅に、僅かながらに何かが見えた。
…靴の先。
それを理解した直後、体中に打ちつけていた雨が急に止まった。
止まったというより、誰かが彼女に傘を差し出して遮った、という方が正しいだろう。
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