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そして、逆にその言葉は誤解を招いてしまったようで、彼女は更に警戒するようになり、いつの間にか訝しげな目で彼を睨みつけていた。
「…あっ、いや、雨が止むまでって意味。下心とかは全くもって無いで!」
訝しい視線を送られて、彼は誤解されたのを察したのか、両手を大きく横に振って否定した。が、彼女はそうやすやすと信じる訳も無く、尚も彼を睨みつける。
そんな彼女に参り始めていた彼だったが、そろそろ雨宿りをしなければ本当に体調を崩してしまいかねないと思い、とりあえずスーツの上着を彼女に掛けてあげると、手を差し出した。
「とりあえず、俺ん家行こ。…ほんまに何もせえへんから」
「………」
どこまでも果てしなく優しい彼の対応に、彼女はとうとう心が折れた、というよりは、諦めたかのようにその手を取った。
すると、微動だにしなかった彼女がやっと動き始めたのがよほど嬉しかったのか、彼は徐々に顔を明るくさせたように思えた。
───── どうせ見かけは良くしようと、優しく接しているだけだろう。
人間の…特に、男のエゴならば尚更。
こんな場所にいた女を助けるだなんて良心は、微塵も無いに決まっている。
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