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この時のわたしは、まだ知らなかったんだ。
友情が、安くて……脆くて……儚いということを……――
今日は晶くんと話さなかったぞ!
さすがの晶くんも、あんなにはっきり言われて諦めたみたいだ。
家に帰り、いつもは部屋に直行だが、珍しくリビングに向かった。
テーブルの上に置き手紙があった。
《仕事が忙しくて、晩ご飯を作れませんでした。お金を置いていくので、何か買って食べてください》
手紙の横に、3000円置いてあった。
「晩ご飯だけで、1日にこんな使わないって」
わたしはソファに座り、ため息をつく。
慣れたとはいえ、少し寂しい。
そういえば、家族3人が揃ったことってなかったんじゃないか?
ああ、わたしが小2と5の時、旅行に行ったっけ?
でもそれ以外、家族との思い出はない。
そう考えると、友達との思い出もたいしたものはない。休みとかは毎日のように遊んでたりするけど、記憶に微かに残ってる範囲内で思い出とはなってない。
わたしは……家族とも……友達とも……思い出がない、悲しい存在なんだ……
「ん……」
頭がボーっとする。部屋が真っ暗で、余計に戸惑う。
わたし、寝っちゃったのか……
意識が少しはっきりしてきて、わたしは部屋の電気を点ける。
ぱっと明るくなり、時計に目をやると、7時を過ぎていた。
「ん~……」
思いきり背筋を伸ばす。
「晩飯……買ってくっか」
軽く化粧をし、わたしは家を出た。
わたしはお母さんに、今日のように“晩飯買っておいて”みたいな買い物を頼まれた時、わたしは決まってあそこに行く。
みんな簡単に“街”と呼んでいる。
街は昼間は明るいビル間の裏にあり、夜に命を吹き起こす……
色とりどりのネオンが明るく街に差し光り、人々を寄せ集める……
人々……というか若者の集まり。
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