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黒斗たちが夏祭りの準備に勤しんでいる時、その少女は遥か離れたビルの屋上からその光景を見ていた。
「……」
感情が欠落したような瞳で、見えるはずのない黒斗をじっと見つめている。
金色のセミロングの髪、同じく金色の感情が欠落した瞳、黒いマントが風になびいた。
両腕には徹甲を装備し、胴体には鎧のような頑重極まる衣装。
だが、太ももを露出するほどに短いスカート。
黒いブーツを履き、すねの部分は鋼の板が仕込まれている。
風でマントがなびかない限りは見えないが、現代の日本ではコスプレと称されてもおかしくはない、異様な姿だった。
「大神 黒斗」
身長は低い。150cmあるか無いか程度だ。
顔も幼いが、日本人ではない。
「あなたを」
突如、強風が少女の背中を押した。
ビルの手摺り外にいた少女は、抗うことなく宙へと出る。
だが、そこで有り得るはずがない事象が起きた。
「守る」
少女は宙に浮いていた。
足元に紋様が浮かんでいる。
金色の、“魔法陣”のような紋様が。
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