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人々がいない都市を一人の少年が走る。
信号は機能しているし、コンビニも営業しているようだ。
だが、人がいなかった。
いつもならば信号待ちしている人々も、コンビニの店員も客も、誰一人いない。
まるでその街から人間だけを抜き出したような、そんな感覚がする。
しかし、おかしいのはそれだけではなかった。
時刻は午後三時だというのに、空を見ても太陽が見当たらない。
快晴とまではいかない天気だが、太陽が雲に隠れているわけではない。
というよりも、色素が無くなってしまい、全てが灰色になったという方が正しい気がする。
その気味が悪い世界を、二車線道路の真ん中を、車が取り残された道を、ひたすら全力で走っている少年がいた。
「ハァッ…ハァッ…」
切羽詰まったように、一心不乱に走り続ける少年。
その背中を追うような形で、一つの声が飛んできた。
「いつまで逃げるつもりですか?」
「あぁ!?
テメェみたいな――!ぅげっ!?」
少年が振り返ると、発光する熱を帯びた赤い球体が迫っていた。
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