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男はさらに続ける。
『――同時に襲え、焼き砕け、天の爆撃!』
エコーがかかったような声に力が込められ、右手は振り下ろされた。
と同時に、三つの炎塊は少年を襲う。
背を向けて走る少年を、正確に、寸分の狂いなく、まるで獲物に飛び掛かる獅子のように、小さな三つの太陽が襲う。
ゴゴオッ――!という空気を焼く音に反応して少年は振り返った。
「おい…マジかよ」
眼前に迫る炎塊を目にして、絶望したように力が抜けた。
ちくしょう――。と言葉を漏らし、そして、少年は炎塊に呑まれる。
巨大な爆発、巻き上がる炎、砕け焼けたアスファルトの地面、空へと上がる黒煙。
フードの男はその少年の結末を満足気に見たあと、ゆっくりと爆発現場へと向かった。
もちろんそこに少年はいない。あるのは焼け焦げた少年“だったモノ”だけだ。
「フンッ、てこずらせてくれました」
フードの男は少年だったモノを掴むと、それを引きずるようにその場を後にしようとする。
しかし、ふと気がついたように爆発現場を振り向き、
「少々大技を使いましたね」
とだけ言って、また同じように歩き出した。
辺りには生き物が生焼けした異臭だけが立ち込めていた。
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