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うだるような暑さが室内を包んでいた。
二階建てのアパート、201号室。
扇風機からの風は、室内の温度に比例して生温かった。
その一室で眠る少年は唸る。
額に汗、暑さだけではなく、悪夢にうなされているようにも見えた。
そしてまさに飛び起きるように、
「うわぁぁあぁあっ!!――ハァッ…ハァッ……、夢?」
ベットから跳ねた。
真夏の激しい日差しによって、室内の温度を上げる7月31日。
少年、大神 黒斗は暑さと悪夢によって目を覚ました。時刻は午前10時を過ぎていた。
(嫌な夢だったなぁ…)
毎朝の恒例であるコップ一杯の牛乳一気飲みをしながら黒斗は思った。
見ず知らずの何者かが、魔法のようなもので炎を作り、そしてそれで焼き殺される夢。
妙にリアルで、気味が悪い夢。
(魔法ねぇ――)
馬鹿馬鹿しい。くだらない。魔法なんて非科学的なものが存在するわけない、と自分の夢を簡単に一蹴した。
あるはずがないのだ。
この二十一世期に魔法なんてものがあるはずない。いや、ある意味では科学も魔法と呼べるだろうが。
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