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直接会わずとも会話ができたり、切手を使わずとも手紙を送れる携帯電話。
羽根が無くても風を作り出す扇風機。
画面に触れて操作することができるゲーム。
太陽光を電力に変えるシステム。
100年も前からすれば、どれもこれも魔法にしか見えないはずだ。
この時代、最新科学がところ狭しと蔓延るこの時代に魔法など。
黒斗はそう思いながら時計を見た。
時刻は午前10時過ぎだ。くどいようだが10時を過ぎている。
(――死んだ)
絶句した。
7月31日の学校は夏休み真っ最中。
黒斗は高校二年生、もちろん夏休みの真っ最中なのだが、
「うがぁぁあぁあっ!先輩に殺される!」
今日は約束があったのだ。
急いで携帯を取り出し、アドレス帳からその人を選択。通話ボタンを勢いよくプッシュ。
数回のコール音の後、ブツッと音がなり繋がった。
「あの~、先輩?大神で――「貴様ぁっ!いま何時だと思ってる!10時10分だぞ!?待ち合わせは何時だ!?一時間以上も前のはずだが!?弁解はこちらに着いた後聞いてやる!早く来い!二秒で来い!それ以上遅れたらその頭をカチ割るからな!」
まさに一瞬の内ですべてを告げ、通話は終わった。
黒斗は茫然と立ち尽くしていた。もちろん、二秒はとっくに過ぎている。
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