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だが行かなかったらどうなるだろう。
もしここで諦め、もう一度ベットに潜り昼寝を開始したとする。
すると、あの先輩はどういう行動をとるか――。
「さーて、こうしちゃいられねぇ!」
考えるだけ無駄だった。
間違いなく殺される。
黒斗は有無も言わずに身支度を済ませ、必要最低限の荷物(主に財布と携帯)を手に家から飛び出した。
「遅いっ!」
待ち合わせ場所である駅前に着いたのは、それから20分してだった。
肩で息をし、滴る汗を拭いながら、その場所にいた男を見る。
眉を吊り上げ、奥歯を噛み締める男。
身長180cm越えで、屈強な肉体、短い髪をワックスで整え、銀縁眼鏡を装着した好青年。
大神 黒斗の一つ年上で、同じ高校に通う、伊集院 渡だ。
「すんません。寝坊しました」
苦笑しつつ黒斗は弁解をしてみた。
伊集院は少し顔を渋らせ、
「素直に告げる行動は良し。急いだ様子も見受けられる。以上に免じ、今回は不問にしてやろう」
あっさりと許した。
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