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伊集院とはそういう男だった。
非を悪気持って謝れば、たいてい許す。
もちろん見かけだけでは許されない。彼はそれを見破る洞察力をもっているのだ。
「では大神よ、行くぞ」
「はい」
伊集院は黒斗が来た道とは逆の方向へ向かって歩き出した。
「もう始まってますかね?」
「無論だな。開始時刻は9時半だ。
余裕をもって9時集合としたが、まったく貴様は」
すんません、と頭を下げる黒斗。
二人が向かっているのは、とある公園だ。
なんの変哲もない普通の公園である。
なぜ夏休み真っ最中の男子高校生二人がそこへ向かうのか。
それは、
「お?やってるやってる!」
「うむ、我々も手伝うぞ」
夏祭り会場の設置準備を手伝うためだった。
明日、8月1日は夏祭り。
あまり大きくはないものの、それでも心浮かれるお祭りだ。
伊集院と黒斗は毎年この準備を手伝っている。
特に深い思い入れがあるわけではないが、近所の子供たちが、自分たちが作り上げたもので楽しむ姿は正直嬉しい。
その思いから手伝いに参加している。
今年で四年目だった。
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