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「へぇテメェみたいな奴でも何かのアドバイスが欲しいのか」
「負けっぱなしってのは柄じゃない」
「ガキみてぇな理由だな…
俺からは物にも感謝しろって事だけだ」
コウゲンはハハッと笑いその一言だけ添えた。
「………」
そんだけか…と思ったがクロナは反論しなかった。
視る目は誰より優れているコウゲンの言葉だからだ。
「今から仕事に集中するからどっか行ってな」
そう言ってコウゲンは釜から真っ赤に染まった鉄を取りだし金槌で叩き始めた。
小気味いい音が工房の中で響き渡る。
あれから剣が造られるとなると相当な時間が掛かる。
だがクロナはコウゲンの後ろでジッと座って工程を眺めた。
口だけじゃない…
それに見合うほどの手馴れた手さばき。
熟練の技が物質に命を吹き込む。
その瞬間をクロナは目の当たりにした。
「お早うございまっす!あれ?」
そこに工房に来たのはコウゲンから殴られていた青年。
「誰だ貴様」
クロナは相変わらず睨みつけながら尋ねた。
「俺はここで働いている者ッス!
あ!昨日、上から落ちてきた人ッスね!」
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