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ノックして返事された以上、すぐに入らないのはピンポンダッシュと同じだ。
いくら俺がやんちゃ坊主でも、そういう人様に迷惑をかけることだけはやっちゃイカンと両親にきつく教え込まれてきて育った。
一度だけ自分に気合を入れ直し、横開きのドアに手をかける。
それはほとんど音もせずスムーズに開いた。
よく考えてなかったけど、個室じゃなくて複数人で使っている病室だったらしい。
その殆どはベッドの周りを囲むように取り付けられたカーテンによって閉ざされている。
しかし目当ての姿は、一番ドアの近くで見つけることとなる。
――いた、ミハルだ。
「よ、よう」
片手を上げ、極めてフランクに挨拶してみる。
あの一カ月ですっかり見慣れた入院着と全く同じ姿のまま、真っ白いシーツのベッドにその体を横たえた少女。
驚いたように目を見開いて俺の姿を認めると、上体を起こした。
「うっそ……マモにぃ? 昨日の、今日で」
「おう。昨日聞いたから早速会いに来てやったんだぞ、感謝しろよ。んで、これ食えよ」
買ってきたアイスと紙スプーンを近くの台に置いてみる。
俺の家に帰って来た時『おみやげ』をやるのと同じように。
「あはは、このアイス。あたしが好きだって覚えててくれてたんだ」
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