ひとり暮らしと、ふたり

2/7

27人が本棚に入れています
本棚に追加
/44ページ
  「……そなの? てか、俺にそんな話しちゃっていいわけ?」 「むしろマモにぃにしか話せないよ。うち、離婚しそうでずーっとギスギスしててさ……もう修復不可能、限界です、ってなったその矢先にあたしが事故っちゃったんだよね」 そりゃまた恐ろしいタイミングなことで…… 「って、そんなときにお前は一カ月も俺の家で、記憶のないまま居付いてたわけなのか!」 「そそ。もー、記憶なくて逆に助かったかもね! 深い事考えなくて楽しく過ごせたわけだし」 ……まるで、『本当のミハルの世界』に戻ってくるのが嫌みたいな言い方じゃんか。 戻ってこられて、幸せじゃなかったのか? ところがミハルはにぃっと笑うと、軽快に締めくくる。   「だけどね? あたしが意識不明になってる間に、あたしという存在が二人を結びつけたの。もう一度やりなおそうって思いなおしてくれたんだ」 「じゃあ……離婚はしなくて済みそうなんだな?」 「そういうこと! 怪我の功名っていうのかな」 自分は事故って一カ月幽霊生活(生きてないからこの言い方が正しいのかどうかは謎)を送る羽目になり、そして今はリハビリ中だっていうのになんて健気なことか…… あの一ヶ月間、ただの考えの浅いアホタレだと思っていた俺を許せ。 もうちょっと賢かったな。  
/44ページ

最初のコメントを投稿しよう!

27人が本棚に入れています
本棚に追加