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部屋は閉め切られていたから出ていくはずもなく……
まだこの部屋のどこかにいるはずだ。
とりあえず、蒸し暑いので窓を開ける。
「ミハルさんよー。『知らないほうが幸せなこともある』って分かりますぅ?」
「な、なんで……だってゴキブリだよ!? 倒さなくていいの!?」
「俺のいない間に出たんだから本来なら俺の知らない話だろ? お前から聞いたら、いるってことを知ったら、気が気じゃなくなんだろが!」
「だって嫌だし、あたしには触れないから倒せないしっ……」
そうそう、そろそろ説明しようか。
俺の目の前で涙目になっている入院着に身を包んだ少女、ミハルは幽霊だ。
先月にひょっこり湧いて出てきた。
この部屋に『なにか』あるらしく、ここから出られない。
また、俺がこの部屋にいてミハルの存在を認識している状態じゃないと、ものに触ることもできないらしい。
俺が学校に行っている間は、何にも触れず何もできず、閉め切られた暗い部屋で待機している。
つまらなさそうだが、ぼーっとすることでミハル曰く『存在が曖昧』になり、時が経つのを早く感じるようになれるんだとか。
幽霊の過ごし方はよくわからん。
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