ひとり暮らしと、ふたり

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  「それでね! 今日は実はただ遊びに来たんじゃないの」 よいしょ、とミハルは持っていたどでかいスポーツバッグを肩から降ろして脇に置いた。 なに、この大荷物。嫌な予感しかしない。 ミハルは憤慨するように腕を組みながら、俺に向かって愚痴りだす。 「なーんかまた両親がビキビキしててさー。むっかついたから家出してきてやったわけ!」 「すまん、日本語で喋れ」 「だーかーら。泊・め・て?」 ……は? なんなのこいつ馬鹿なの? 死ぬの? いや一回死にかけたけど。 もっとこう……あるだろ、友達の家とか。 「適度に遠くて、バレなさそうで、泊めてくれそうで……って考えたらマモにぃしか思い浮かばなくてさー。今度のあたしは生身だから手伝いとかできるしっ」 「お前……正気?」 「うん」 あっさり頷きやがった。 俺がミハルを『そういう対象』として見られないように、ミハルからも俺は『そういう対象』じゃない、ってことか。 ああ、でも、いいぞ。 お前がその気なら、ちゃんと一人の人間として俺に泊めてくれと願うなら―― 「しょうがねえな、居候。泊めてやっても構わないがここの主は俺であることを一秒たりとも忘れずに従えよ!」 「えっへへー、よろしくお願いします!」 そうして、今度は幽霊とではなく、一人の女の子との同居生活が始まるのだった。  
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