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早雪が肩を揉み終わると土方は早雪に小さな袋を渡した。
「和菓子?じゃない?」
早雪がそう言って袋を開いたら赤い紐が入っていた。
「…紐?」
早雪が不思議な顔をしていると土方は笑った。
「髪を結う紐だ…」
そう言って土方は早雪を後ろに回して勝手に髪を結い始めた。
「お前は暑いのに髪をおろしていると余計に暑いだろ~」
「ちょっと!やめて…」
早雪が言ってもそのまま土方は器用に髪を結い早雪の白い首筋を見た。その時、早雪は手で左側のうなじを隠した。
「お前…その傷…」
土方に言われ早雪は振り向くと早雪は泣きそうな顔で黙って土方を見て、紐を解いた。
「あの、暑くても…いいんです。紐…ありがとうございます…。」
早雪はそう言って土方のくれた紐を持って部屋を出た。
「斬られた跡か…?」
土方は余計な事をしたと思い、ため息をついた。
早雪は土方に傷を見られ、悲しい気持ちになっていた。
「せっかく、髪を結ってくれたのに…」
早雪の傷は小さな頃に義理の父親にビンで殴られてその時、ビンが割れ左側のうなじ辺りが斬れて手術した跡だった。今でもハッキリ残っていて、早雪はずっと髪を縛らない程度で傷が見えないように伸ばしていた。
「綺麗な赤い紐…」
早雪は土方から貰った紐を見ていたら涙が流れていた。
「ここは私には優しすぎる…」
早雪は土方から貰った紐を握りしめて、そのまま眠りについた。
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