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土方は早雪が部屋を出た後、しばらくは早雪の時計を眺めていた。 「返してねぇ~な…」 そう言って煙管に火を付けた。 さっきの早雪の泣きそうな顔を思い出していた。 「可哀想な事したな…」 早雪に結った赤い紐。土方が本当は別の女に何か贈ろうと店に入ったがあの紐を見て、早雪をすぐに思って買った。 早雪の栗色の髪。きっと似合うはず、早雪は笑顔で喜ぶと。 そして、朝に台所で早雪にあって、夜になるのを楽しみに待った。 そう思ったら、まさかの結果だ。 「俺は…笑顔で喜ぶと思ったな…」 土方は早雪を傷つけたと思い、煙を吐いた。 朝になり、朝御飯を食べようと土方が広間に行くと廊下で早雪に会った。 「おはようございます」 早雪は土方に挨拶して台所へ行った。土方は早雪の後ろ髪を見た。 「でっかい蝶々だなぁ~」 土方はそう言って微笑んだ。早雪は頭の上の髪だけを紐で縛り、下の髪はそのままおろしていた。傷は見えない。早雪が考えた縛り方だ。 「早雪さん…可愛いですね」 いつの間にか隣に総司がいた。 「誰が、あの紐上げたんでしょう…」 そう言って総司は土方を睨んで見ると土方はニヤリと笑って言った。 「さぁ~、誰だろな…」 そう言って広間に入った。 「僕も何か早雪さんに髪飾りとかあげようかなぁ~」 総司は土方に言って、ご飯を食べ始めた。 「団子の方がいいぞ」 土方は総司そう言って笑った。 「団子ねぇ…そういえば、左之さんも上げてましたね~、後は源さんも…他の一緒に仕事してる隊士も…」 総司がそういうと土方は眉間に皺を寄せ総司を見た。 「そんなに団子貰ってるのか?」 「ええ…やっぱり、早雪さんは可愛いですからね…「普通の女中」にしなきゃよかったですよ~」 総司が残念そうに呟きため息をついた。土方は笑った。 「それは残念だったなぁ~、総司」 土方は思った。早雪の髪はあれは自分への感謝の気持ちだ。あれ以上は早雪には無理だ。 「でも…やっぱり団子だろ~上手い団子なら、きっと喜んでくれるぞ…」 そう言って総司を見ると総司は笑った。 「上手い団子なら僕が一番ですね、土方さんには無理ですよね~?」 総司は土方を見て不適に微笑んだ。が、土方は早雪が自分の紐を結っているだけで十分に嬉しくて、黙って総司を見ていた。
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