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芋+味音痴兄弟/マフィアパロ
「っは……はっ…!!」
どれくらい走っただろう。
周りの景色はどれも同じようなコンクリートの壁。
そして前を走るギルベルトたちの速さは変わらない。
アーサーは無駄な考えを消して走りに専念しようとしたとき、脇腹に鈍い痛みを感じた。
先程撃たれた傷だ。
まるで熱い棒が射し込まれているかようにずきずきと痛む脇腹。
スーツはそこから溢れる血で赤黒くなっており、ワイシャツに関してはもはや原色を残していない。
そしてどこか内臓が傷付いているのだろう、吐く息はうっすらと血の味がした。
それによる痛みと走ることによる息苦しさが合わさって体調は絶不調。
けれど前方を走る彼らに迷惑をかけたくなくて必死に追いかけるが、出血によって足元がふらつき上手く差を縮めることが出来ない。
ちらちらと心配そうにこちらを見てくるアルフレッドに柔らかく微笑み、早く行けと促す。
それでも心配そうな表情を浮かべていたが、アルフレッドはギルベルトたちの後を追い始めた。
アーサーも同じくそれにならおうとした。
けれど異変は唐突に訪れた。
ぐにゃり、と世界が歪んだ。
異変を感じたのは一瞬。
そして気付いたときにはもう遅かった。
無機質な冷たいアスファルトに受け身も取れずに倒れた。
ごつ、と鈍い音をたてて頭が地面に叩きつけられ目の前に白い火花が散る。
「アーサーっ!?」
その音を聞いたアルフレッドは悲鳴に似た叫び声を上げて駆け寄ってきた。
その声で前を走っていたギルベルトとルートヴィッヒもアーサーの異変に気付いたらしく近寄ってきた。
「大丈夫かい!?」
背中と地面の間に腕を差し込まれてゆっくりと起こされた。
何か答えようにも息苦しさでひゅー、という息の音しかしない。
「酷い出血だな…」
アーサーの脇腹と今まで走ってきた道を交互に見てギルベルトはそう呟いた。
彼の顔には微かな焦りが浮かんでいる。
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