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「アーサー…」
泣きそうに滲んだスカイブルーでこちらを見てくるが、アルフレッドにもここに残られては意味がない。
ちら、とルートヴィッヒの方を見ると、彼は全てを理解した顔で頷いた。
そして苦しそうに双眸を細めた。
彼もまたアルフレッドと同じく大切な人を失う可能性を抱えているのだ。
「行くぞ、アルフレッド」涙を忘れるように狼狽えるアルフレッドの腕をルートヴィッヒは半ば強引に引いた。
それにアルフレッドは抵抗をしなかった。
魂が抜けたかのように従順にルートヴィッヒのなすがままになっている。
アーサーは何か言おうとしたが止めた。
ここで何か言ったらきっと浅ましい自分は引き止めてしまう。
「アルフレッドを頼むぜ、ヴェスト」
「…ああ。兄さんも無事で」
必要最低限の言葉を交わす。
無駄な言葉など必要なかった。
いつだって互いの気持ちは十分過ぎる程わかっていたから。
にこ、とギルベルトはルートヴィッヒに微笑んだ。
ルートヴィッヒはその横を無言で通り抜ける。
路地を曲がる瞬間、アルフレッドはアーサーの名前を呼んだ。
「アーサー…っ!!」
そんなアルフレッドにアーサーは慈愛を込めた微笑みを返した。
「…I love you,Alfred.」
ぼそ、と呟いた言葉はアルフレッドに届いただろうか。
けれどしっかりと隣には届いていたらしくギルベルトは鼻で笑った。
「何かっこつけてんだよ、アーサー」
「最後くらいいいじゃねーか。…それより、お前はクラウツに別れを言わなくていいのかよ」
にやにやと笑うギルベルトを横目で睨みながらアーサーは少し強めの皮肉を言ってやる。
すると調子外れのようにギルベルトは笑い始めた。
驚くアーサーを横目にギルベルトは腰に手を当てて自信満々に宣言する。
「いいんだよ。俺様は生き延びるんだからな!」
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