米英/ヴァンパイアパロ

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米英/ヴァンパイアパロ

「Good morning,Arthur!」 瞼が緩慢な動作でうっすらと開かれた。 そこにあったのは、ガラス玉のように濁りのないエメラルドグリーンの瞳。 生理的な涙によって蕩けるように柔らかな色のそれは食べたらどれだけ美味しいのだろうか。 そこまで考えて自分にもとんだ悪癖があったもんだとアルフレッドは自虐も込めてそのスカイブルーの双眸を細めた。 そして今起きた恋人にそっと微笑んだ。 「おはよう、アーサー」 二度目の挨拶を告げると、アーサーは目の前の様子をよく見ようとするように緩慢な瞬きを数度した。 そして不快そうにその特徴的な眉を寄せ、綺麗な瞳に苛立ちの色をありありと浮かべてアルフレッドを睨み付ける。 「おはようじゃねぇよ……お前、今何時だと思ってんだ?」 「深夜二時、ってとこかな?」 ちらりと返り見た時計が指す大体の時刻を述べるとアーサーは大袈裟にため息をついた。 「お前なぁ…」 そして所々寝癖の立つ頭をぐしゃぐしゃと掻いた。 「少しは時間を考えて来いよ!!そんなんだからKYって言われんだよ!!」 「うるさいなぁ…気付いたらこんな時間なんだもん…。時間が俺に合わせてくれよッ!!」 「ったくてめぇは…っ」 そしてそのままの勢いでアーサーは口汚いスラングを並べる。 寝起きのアーサーの機嫌は酷いくらい悪い。 その時だけは元ヤン時代の彼の性格が首をもたげる。 昔は巷で名を馳せていたアーサーは喧嘩が強い。めっぽう強い。 多少は腕が立つと自負しているはずのアルフレッドでさえ敵わないほどの強さだ。 この間なんてよほど虫の居どころが悪かったらしく、蹴り飛ばされて危うく病室の窓から落ちそうになった。 その時ばかりは背筋がひやりとしたものだ。 そんなことは二度と御免なアルフレッドは何とかしてアーサーの機嫌をとろうと微笑みかける。 けれどアーサーの表情は依然として怖いまま。
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