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米英/RPG
「もしもしアメリカさん」
「ん?なんだい日本?」
いつもの定期会議も終わり帰路に着こうとした頃、後ろから声をかけられた。
誰かと思って振り向くとそこには日本の姿が。
にこ、と微笑む顔にはいつものように笑みが貼り付けられていた。
「新しいゲームを開発したのですが、よければ私の家でテストプレイしませんか?」
「新作のゲーム?でも何でまだテストプレイしてないんだい?」
意外だ。
いつもならテストプレイを終えた完成品を日本は渡してくるはずなのに。
「今回開発したゲームは実際にゲームの世界に入ることが出来るんですよ。ですので是非皆さんに最初にやっていただきたくて」
「ふーん…」
内容に興味をそそられるがいまいちピンとこない。
会議で使った資料を適当に鞄に詰め込みながら曖昧な返事を返すと、日本は少しだけ目を大きく見開いて驚いた表情を浮かべた。
「あら、興味がありませんか?残念ですね、せっかくイギリスさんもいらっしゃると言っておられましたのに」
そう言って困ったように口元に手を当てて首を傾げる。
なんて白々しい態度。
けれど『イギリス』という名前に敏感に反応し、作業の手を休めて日本の方を向いてしまう自分がいた。
向いてしまってはもう遅い。
そんなアメリカの様子に困り顔を浮かべていた日本は満足げに微笑んだ。
「ふふ、それでは一週間後に私の家に来てくださいね」
それだけを言い残して日本は会議室を出ていった。
その背中を見送りながらアメリカはゆっくりと息を吐いた。
表情の読めない日本がアメリカは嫌いだった。
自分より少し低い位置から見上げてくる漆黒の瞳はまるで全てを見透かしたと言わんばかり。
まぁ、そんな彼の思惑通りになってしまう自分の方が嫌いなのだが。
とりあえずそのことを頭の片隅にメモをし、資料を片付けて会議室を後にした。
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