0人が本棚に入れています
本棚に追加
ところで、帝王戦争の英雄と呼ばれる者達の中に、正体不明の男がいた。ツェクソルと名乗るこの男、彼の手による手記が同じく英雄とされる富永京一郎の残した文献に紛れていたのを私は最近発見した。ポール式アルファベットにより綴られていた同手記は、その言語が未知の物であった。と同時に、ロジエ語の特異語をそっくり含んでいたのである。分析の結果、この人物の出身はロモ帝国。先の古ランス文明の発祥地であった。
私はこの手記に用いた言語をランス民の固有言語と断定。数百頁に渡るこの手記から語彙を抽出し、基礎語彙としてまとめ上げた。
また、その手記と共に、ランス民の間で英雄叙事詩として知られる『ファルツーク伝』がその言語で発見された。この物語は遺蹟でも多くの石碑に刻まれていた。結果、ランシアの文字体系も判明し、遂には同言語の完全解読に成功した。
この本は、現在暫定的にクリスティア語を公用語に用いるランシア共和国の依頼に基づき、民族語再生の手引きとして執筆したものである。
大暦2013年9月
旭民主太平国名誉魔法科学技師
赤谷良平
最初のコメントを投稿しよう!