~一章~

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 「失礼します」 呼びだしがなけれはこの後眠る予定を立てていた為いささか、否、かなり機嫌の悪い朱華が部屋に入るなり元気な声に迎えられた  「遅いよ!!朱(シュウ)ちゃん」  「ウルセエ、何のようだ叔父さん」 イラついたように問いただした声に一瞬目を見開き、  「ひどいなぁ~兄さんから【菊一文字 靖則(キクイチモンジ ヤスノリ)】預かったのに」  「!! もう修復終えたのか?」 朱華の機嫌を一発で直した者こそ、この学園の理事長、龍院 朱樹(リュウイン シュキ)。漆黒の髪は短く、瞳は紅い。 朱華の父親、龍星院 蒼華(リュウセイイン ソウカ)の弟で、朱華からすれば叔父にあたるのだ。  「菊(キク)、どうだった?」  「大丈夫だよ」 朱樹から朱華に渡されたのは一振りの刀。この世界では[トウジン]と呼ばれているものだ。 [キメラ]を殺す為に生み出された兵器。  「そっか、よかった。御帰り、菊」  ≪ただいま。朱ちゃん≫ [トウジン]とはその名の通り、人と刀を組み合わせて人が作り出した[キメラ]故に人の言葉を理解し、話をする事が出来る。また、強い力を有している[トウジン]は人の姿になる事も出来る。  「ま、いい。叔父さん俺、戻るな」  「朱ちゃん、またね」  「あぁ、親父にサンキューって伝えといて」 朱樹の返事を聞く前に部屋を後にする朱華  「あの事まだ引きずってるのか、朱華。」 部屋に残った朱樹の呟きは誰かに聞かれることなく空気にきえた
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