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わしはこの男が以前からわしの姉のことを可愛いとか美人だとか言うのを耳が腐るほど聞いている。最近は相手にするのが疲れてきよる、いい加減告白するなり、諦めるなりした方が良いという感じである。まぁ姉に思い人がおれば多分なら玉砕じゃろうけどな。あののらりくらりとした姉が好きになる相手がいるとしたら、見てみたくはないわけではないが……。 七月十日、それは夜が更けた頃のことだった。姉はいつも通り、午前一時を回って帰宅することになるが、わしはそれを待つ間もなく、午後七時には夕飯を食べ、その後すぐに布団に横になり読書をしていた。見るは今月の雑誌。芸能人やモデルがトークを繰り広げているのを読んだ後、占いのコーナーを参照する。 わしは先月生まれじゃたから六月のところを読む。仕事★★★★★、恋愛★★…学業がまずまずなら善しとしようと満足しながら次のページを開くと十月があった。確か姉が十月だったなと思いつつ、そんなことがあっても、いつもなら姉のことなど気にも留めないわしじゃったが、最近の浮かれようからちょっと気になった。仕事★★★、恋愛★★★★★…。「ほほう、姉上にも運命の人登場か?!」と一人で言ってしばらく眺めていたが、眠くなってきたので、目を閉じる。 夢心地になりながら、姉の運命の相手とはどんな感じの人間なのか?やはり姉と同じで掴みどころがなく、すぅっとしているのだろうか?あれこれと思惑を巡らせているうちいつしかわしは安らかな眠りに落ちていた。 「うふふ、ふふふふ」 真夜中だったろうか、姉の部屋から嬉しそうな笑い声が聞こえてきたのは。小声じゃったが、目を覚ましたばかりのわしにはちょっとした刺激じゃった。よく聞こえる。しかし、何故真夜中?疑問に思い、耳を澄まして聞いていると、 「わたしはあなたのこと結婚前提だと思ってるよぉ」 と。 なんと鼻歌交じりになってから一ヶ月、姉の恋は急展開を迎えていた。仕事も夜遅くに帰ってきて、電話で恋人と楽しそうに会話している。わしも姉とは長い付き合いじゃが、ここまで楽しそうにしているのを見たことがない。 姉は大体付き合うと「あの人、肩書にこだわるから」とか「言うことがうさんくさい」とか相手の陰口ばかり言っておる。それが今回の恋愛では人が変わったように好意的に接しておる。わしもこの一ヶ月姉から相手の話も聞いたことがなかったので
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