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姉の中で好い線まで行っているということなのじゃろう。しばらくそのまま耳を澄ますのじゃった。 「明日は暇よ……誘ってくれるの?ありがとう!」 何かデートの約束もし始めた。姉と恋人は明日の予定でそれから一時間くらい話し合っていた。わしもまた睡魔が襲ってきて、やむなく再び目を閉じる。 しかし、真夜中に電話するくらいの相手じゃ、姉は相当入れ込んでおるようにも思える。 恋は盲目とは昔の人間はよく言ったものじゃ。 わしの姉がまさに夜中他人の迷惑も考えず、思い人に連絡を入れておるように、恋する者には周りが見えなくなって、相手一筋になるのであろう。 わしはそこまで入れ込むような恋愛はまだしたいとは思わない。何事も中庸が肝心じゃ。恋人より友達感覚で付き合える女の方が良いような気がする。 こうしてだんだん時期が来たら、また一人、また一人と自分の道を決めて歩んで行くのであろう。 わしにとって人生は何も起こらない、平凡なものであってほしいというのが念頭にあり、わしも自ら目立つような行いは避け、一般人的に事を進めてきている。口数も割と少なく、少々余裕がないが、それでも年相応の子どもらしく生きておるつもりじゃ。 明日も来る。寝よう。 「叶、お姉ちゃん先に出かけるからね。お弁当と朝ご飯、机の上に置いとくから」 と、姉は朝早くからぱたぱたと手際よく家事をこなし、出かけて行く。 わしは目が覚めたばかりじゃったからふわふわとして、うまく聞き取れなんだ。 もぞもぞとした足取りで階下へ降りて行く。 姉は玄関で靴に履き替えていたが、その姿がいつもとは驚くように違っていたので、わしは目を丸くしてその一部始終を凝視してしまった。 オレンジのバンダナにピンクのレースのシャツ、暖色系のグラデーションのロングスカートに足元は茶系のサンダル これまた新鮮な感じで、オレンジの香水の匂いも漂わせている。 いつもはこんなに明るい服装をする者ではなく、どっちかというと、地味目で汚い出で立ちだったが、お洒落をすると、際立って見える、ぱっちりとした綺麗な目と、低めで軽く上を向いた小さな鼻、紅をさしたのかピンクの唇、卵型を思わせる顔の輪郭もくっきりと鮮やかで、細く絞まった体に小さな胸と尻も綺麗に見える。 周りの者からの姉の定評は「可愛い」とか「美人だね」とかいうことだったが、
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