生い立ち

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駅に着くと私は父が母のサイフからお金を抜いていったのを思い出して 慌てて母に自分の貯金箱を差し出した。 「使って!」 せいぜい2000円弱しか入っていないだろう貯金箱だったが これが私のできる精一杯だった。 母は目に涙を浮かべながらとてもいい笑顔で 「…ありがとう」 と言った。 私は久々の母の笑顔にとても満足した。 欲しいものは色々あったが 母の笑顔は最近では見られなくなっていたので 一番欲しかったものかもしれない。 そして私達は そのお金で埼玉行きの電車に乗った。
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