生い立ち

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その日から私と母はすれ違いの毎日を送った。 私が学校から帰って母が出勤する18時までと 朝ごはんの時間だけが 一緒にいられる時間だった。 寂しさはあったけど 体に無数にあったアザが消えていき 次第に笑顔が多くなっていく母を見ていると 嬉しく思う気持ちの方が強かった。 家を出て10日くらい経った頃 父が母の店にやってきたらしいが 五十嵐さんが手切れ金として300万を渡すと離婚届にサインして帰ったらしい。 それから4年、母は休みなく働きつづけ300万を返済し 35歳の時、小さなスナックを開いた。 女二人じゃ大変だろうと五十嵐さんはよくお客様を連れてきてくれた。 私は五十嵐さんをとても慕っていたし 五十嵐さんも 「美雪に顔も性格もよく似ている」 と、とても可愛がってくれた。 それから私が高校を卒業するまでの7年間 女手ひとつで私を育ててくれた母は 私の卒業後に五十嵐さんと再婚した。
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