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独身女性の群れに向かって走って行く透真。
「新婦様、カウントするので思い切り投げて下さいね!それでは、いきますよー!3…2…1!」
司会者のカウントダウンにあわせてマイが両手に握っていたブーケを思い切り投げ上げた。
ブーケは放物線を描きながら、独身女性の輪に吸い込まれるように空を舞う。
手を伸ばした女性たちの更に上に手が伸びて
その手がブーケをしっかりと掴んだ。
受け取るというより奪い取るようにブーケを掴んだのは透真。
皆が驚きの表情を浮かべて透真を見る。
「え、えーっと…」
司会者も困ったように声をもらした。
「すいません、コレ、どうしても渡したい子がいるんで」
皆に向かってそう言うと透真は私のもとへ駆けてきた。
私は軽くパニック。
「ちょ、透真何やって…みんな困って…」
慌てる私の手にブーケを握らせる透真。
「まさか、梨花がブーケトスに参加しないとは思わなかったから、焦った」
そして、私はブーケの中にある物に気づいた。
「こ、これ…!」
それはバラの花にくくりつけられたカード。
カードには指輪がはりつけてあって
一言、"結婚しよう"と書かれていた。
「…ヤスとマイちゃんに頼んであって、マイちゃんが梨花に向かって投げる予定だったんだけど、梨花は行かないし、司会者に促されたらマイちゃんも投げるしかないし…だから俺が受け取るしかないだろ」
透真はそう言って恥ずかしそうに頭をかいた。
嘘…
思いがけないサプライズに私の目からは涙がポロポロと零れだす。
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