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しかしそれやこれと、コーネリアの言う「頼み事」がどんなものだかまだ分かっていないルルーシュは、まだ少々の心のゆとりというものがあった。
―――――――――――――
なんの不運だか知らぬが、ユーフェミアの叙任式である日に急な仕事が入ってしまった。
言わなくても分かるだろうが、これは戦であり、軍に助けを求めるブリタニア市民が数百人いると言ったところのな。
非常に不愉快だがこればかりはどうしようもないと私も割り切ることにした。
私から贈るはずだった祝いの言葉が、単なる紙きれになってしまうこともな。
そこでなんだが。
親族からの祝いの言葉をする者が急遽必要になった。
したしい仲の兄弟と言えば、クロヴィスは絵を贈ってくれるというし、ナナリーは少し私の代わりをするには幼すぎる。
今の地位や権力、知名度からしても、私と同等かそれ以上の者――
つまり、お前だルルーシュ。
頭の良いお前なら祝いの言葉くらいちゃちゃっと用意出来るだろう?
断られては困る。
幼い頃からの恩を忘れたわけではあるまいな。ルルーシュ。
返信は手紙ではなく、電話などにしてくれ。間に合わないからな。
肯定の言葉以外受け取るつもりはないが…
叙任式でユフィに恥をかかせたら。
お前とて只ではおかんぞ。
良い返答を期待している。
―――――――――――――
「…なんだこれは…。」
思わず頭を抱えたルルーシュは、呆れが混じったため息を容赦なく吐き出した。
偉そうに語る姉の姿が容易に想像できる手紙は、重要なところに詳しく触れることなく終わっている。
手紙を覗きこんだナナリーも、状況を把握したのだろう。
「コゥ姉さま…残念ですね」
ルルーシュに言わせれば若干的外れな感想を呟いたナナリーは、昔からの可憐な笑顔で続ける。
「でも…頑張ってください。お兄さま。コゥ姉さまからのお願い事ですし、ユフィ姉さまもお喜びになると思います。」
「…そうだね。姉さんに電話してくるよ」
黒い色を基調とした服を纏った、背の高いルルーシュを見上げながら笑ったナナリーは少しこの状況を楽しんでいた。
久しぶりに、少し慌てるお兄さまが見れるかもしれない、と内心思っていた。
でも、それは。
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