彼を嫌った

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  広い謁見の間でただ1人、突然迫って来た運命に震えるルルーシュは、思考を正すのになるべく集中する。 動揺し続けてはられない。 忘れてはいけない。 自分はこれから座っているだけでなく、やることがあるのだ。 目に映る景色ははうねるように歪む。まだ混乱しているんだろう。 コツ、と近くで響く足音に体が反応する。 恐る恐る目をやると、成長した…それでも記憶通りの相変わらずの童顔が、真面目な顔で絨毯の上を歩いていた。 それからその先で起立するユーフェミアの少し前で止まり、跪いて頭を下げる。 その時に揺れた、あの柔らかげな癖毛が好きだったと、眉を潜めながらルルーシュは思った。 「…枢木スザク。」 いつもより強い少女の声が響くと同時に、その少女の腹違いの妹――ナナリーは少年に向けていた目を背けた。 ルルーシュの実妹である彼女も、知っている。 枢木スザクという名を。 姿を見ても、淡い期待を捨てきれなかったのか。 ナナリーは名前を聞くまで一心に向けていた視線を下におろした。 「汝、ここに騎士の誓約を立て、ブリタニアの騎士として生きることを願うか」 「イエス、ユア・ハイネス」 厳かに響いたスザクの声は、ルルーシュが知らない少し低い声。   今まさに騎士となる少年が腰から引き抜いた剣が、光に照らされするどく光る。 歪んで霞む視界に刺さるように入ってきたその光の痛みに、ルルーシュはただ耐えることしか出来なかった。    
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