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「騎士だと?」
広く、豪華な机や小物があふれる書斎。
白い繊細な指に掴まれた書類に、少しだけ皺ができる。
響きの良いテノールの声は、若干苛立ってるように思えた。
「はい、殿下。皇帝からもなるべく見付けておいた方が良いとのことでして」
「兄さんまで出てきたのか…、そうなるといよいよ選ばなければいけない様だな」
「殿下は公の場にお出になることも増えましたし、十二分に、騎士をお持ちになっておかしくないかと」
はあ、という溜め息と共に書類を机に投げ出した黒髪の少年――ルルーシュ。
18歳。少年と呼ぶには少々相応しくない年齢かもしれないが、彼の容姿はそれが相応しく感じるあどけなさや儚さを見てとることが出来た。
「ジェレミア、お前じゃ駄目なのか?小さい頃から世話になっているし、正直誰でも…」
「殿下、私の力不足はご存知でしょう…。相手がナイトオブラウンズとは言えどあのありさま。演習で無かったら私は今ここには居なかったでしょうね」
「…まあ、実戦なら間違いなく殺されていただろうな」
皇帝――シュナイゼル兄さんも趣味の悪いことをなさると冗談を言い合いながら、すいとルルーシュが目を向けた先には、ジェレミアが持ってきたのであろう分厚いファイル。
「ラウンズ並みとはいきませんが、相当実力のある騎士たちをリストアップ致しました。」
「分かっているだろうが、ブリタニア人だけでは無いだろうな?」
「勿論です。日本人を始めとする各国の数名も、リストに上げさせて頂きました」
皇族の専属騎士というものは、なれれば危険や緊張の連続ではあるが、同時に高い身分を授けられるため、いわゆる貴族になれる。
貴族は世襲であるから、自分の家族はもちろん、子孫までそれなりの贅沢が出来るようになる。
そんなおいしい話を受けられるのがブリタニア人だけとは、問題が起きるのだ。
ルルーシュに仕えて長いジェレミアは、そうゆう所も気遣っている。
騎士として迎えるかどうかは別として、形があるのとないのとでは、やはり違うものだ。
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