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「あ、いや…空きがあったものだから」
「?、空き?」
「ここだ」
ファイルには顔写真の横に学歴や戦積などが大雑把に記されていた。
1ページあたりに3人ずつ。
今までのページでは几帳面に詰められていたそれ。
ルルーシュがジェレミアに見せたページの1箇所、つまり1人分のスペースだけが不自然に空いていた。
「…すみません。コーネリア皇女殿下から受け取ったものをそのままお出ししましたので、もしかしたら…」
「ユフィが抜いたのかもな。こんなに居るのだから、被ることなどないだろうに」
「分かりませんよ。殿下とユーフェミア様の好みは案外似てらっしゃいますから」
「そうか?どんな奴だったのか、少々興味があるが…」
「コピーを持ってきましょうか?データは保存してありますので」
「……」
結局、兄と選んだ騎士が被らないように抜いたであろうという予測は当たっていたのだが、このことを深く考えずに、
「…いや、良い。どうせ叙任式になれば分かることだ。最もこれがユフィじゃなくナナリーだったら俺も調べさせただろうが」
「よくご自分を分かってらっしゃる…」
冗談混じりに呟いたルルーシュは、ジェレミアの小さな切り返しに微笑…は浮かべずとも、涼しい顔で「特別扱いは昔から変わらないものだな」と呟き、ファイルを閉じた。
「…お決めになったのですか?」
「ああ。1ページ目の左上の奴だ。…それと、兄さんが言っていた書類。」
澄ましたその言葉にジェレミアは苦い顔を浮かべる。
椅子から立ち上がって何処かに行くつもりらしい主を目で追いつつ、いそいそとファイルや、いつの間にか完成したらしい書類をまとめる。
「……殿下、お待ちください。それは単に1番目の者を選んだだけでは…」
「うるさい。しつこいぞ、ジェレミア」
「私はルルーシュ様を思って…!」
「俺は今から寝る。兄さんから出された書類は片付けたし、お節介な従者の小言を聞くのも飽きた。……それ、しっかり渡しておいてくれ。」
「―――。」
足早に書斎を出たルルーシュは、隣接してある寝室に入って行ってしまった。…………これから先はジェレミアは入れない。
そういう言い付けだ。
「…イエス、ユア・ハイネス…」
少し小さな、悲しみを帯びたような声の返事が、焦げ茶色の厚いドアに吸い込まれていった。
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