極めて不自然に、まるでそれが自然なことのように

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 一週間前のことだ。 ミズヤはいつものように人を殺す依頼をニギハヤヒ家という暗殺屋の総本山から貰い、深夜、人通りの無いことを確かめた路地でそれをこなしていた。 そこにたまたま通りかかったのがこの女だった。 予定が崩れたのは初めてだった。 殺さなくては、と反射的に体が動いた。 武器はゴッシヴ(呪文を唱えることで魔法を発動させる方法)で出した氷剣しかなかった。 魔法による氷剣だ。 ただの氷とは違う。 首くらいはとばせる。 そう、これで確かにこの女を殺した。 そう考えていた。 しかし全くの想定外の事態が起きた。 氷剣は首に突き刺さったものの途中で止まり、さらに女は別に何事も無いかのようにこちらを見ている。 そして優しい手つきで氷剣に触れると氷剣は空間に溶けるようにその形を失った。 女は血さえ出さなかった。 人間では有り得ない、そんな光景だった。
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